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東京高等裁判所 昭和36年(く)69号 決定 1961年8月16日

少年 K(昭二一・九・二六生)

主文

本件抗告を棄却する。

理由

本件抗告の理由はトランジスターラジオを取つたのはHであり、少年は赤の棒を取つただけである。鉄道線路の鉄はSらにいわれて取つたのであり、少年がいい出したものではない。恐喝も少年が金をかりようといい出したのではない。そしてかりた金は四人で使つた。みんなどの事件も少年がいい出したり、先に立つてやつたことはない。やつた人がみんな同じようにきまつたのなら文句はないが、少年だけ少年院へ行くということは大へん不公平ではないかと思う。どうかもう一回しらべてみんな公平に処分してくださいというのである。

そこで考えてみるに、原決定が少年を初等少年院に送致する理由として掲げている非行事実は鉄道のアンチクリーバーの窃盗と無断家出の件であり、少年のいうトランジスターラジオと赤の棒の窃盗や恐喝の事実は原決定において非行事実としては認定されていないのである。そして恐喝事実については記録上その資料がないので事情を明らかにすることはできないが、トランジスターラジオと赤の棒(アース棒)の窃盗については参考記録があるので調べてみるに、なるほど実際に手を下した事実からみれば、少年は赤の棒を取り、Hはトランジスターラジオを取つたことが認められるけれども、少年とHが相談の上でやつたことであるから、法律上は二人がそれぞれ全部の事実について責任を負わなければならないことになるのである。しかしてアンチクリーバーの盗みについてはそれをいい出したのは、少年ではなく、Tであつたことは記録により認められるところである。しかしながら記録全体を調べこれに現われた少年の資質、非行歴、家庭状況、家庭環境等よりすれば、この際少年に対してはその性格のかたよりを是正し、規律ある生活態度を確立させるために相当な少年院に収容する必要があるものと考えられるので、少年を初等少年院に送致することとした原決定は正当であるとともに、他の共同非行者らとの間に処分の不公平ありとは考えられないので、本件抗告は理由がない。

よつて少年法第三三条第一項により本件抗告を棄却することとし、主文のとおり決定する。

(裁判長判事 長谷川成二 判事 白河六郎 判事 関重夫)

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